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科学・医療
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Muse細胞、その後の経緯


 Muse細胞は、2010年に出澤真理教授らの研究グループにより発見の報告があり、バイオスタートアップのClio(クリオ、秋田市、吉田正順社長〔当時〕)が実用化を目指して開発を進めることになります。

 2015年、Clioが三菱ケミカルグループのヘルスケア事業会社である生命科学インスティテュート(LSII)に連結子会社化されると、以降、Muse細胞は、LSIIが開発を進めることになります。

 LSIIはその後、Muse細胞を点滴投与することによる再生医療等として、急性心筋梗塞、亜急性期の脳梗塞、表皮水疱症、亜急性期の脊髄損傷、新生児低酸素性虚血性脳症、筋委縮性側索硬化症、新型コロナウイルス感染症に伴う急性呼吸窮迫症候群を対象に、治験を行います。

 LSIIは「条件及び期限付き承認」による上市(じょうし。市販すること。)を目指し、4件が承認されましたが、亜急性期の脳梗塞の治験は偽薬群と統計上の有意な差が出ていたにもかかわらず、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に門前払いされます。

 出澤教授らは、審査の基準が曖昧であること、審査官の一人が人工多能性幹細胞(ips細胞)の論文を書き、ips細胞研究者と講演会も企画した人物であることに利益相反があるとして、PMDAの判断に不信感をあらわにします。

“Muse細胞”脳梗塞患者の身体機能が改善(2021年5月18日)

 三菱ケミカルグループはこの結果を受けて、2021年、「条件及び期限付き承認」から「正式承認」を目指す戦略へ方針転換しますが、2023年2月、経営上の理由から、一転して開発の中止を発表するに至ります。

 出澤教授らはMuse細胞の使用に関する権利の返還を三菱ケミカルグループに求め、今後、新たなパートナー企業を探し、開発を続ける方針を表明しています。また、三菱ケミカルグループの治験データに疑義があるとして、病院側のカルテとの照合を求めています。

臓器修復に期待のMuse細胞 開発会社にライセンス解除を求める 細胞を発見した東北大学大学院の出澤真理教授

 Muse細胞をめぐるこうした一連の動きを見ていると、利益相反に抵触する可能性のあるPMDA内の審査官の存在、三菱ケミカルグループ側の発表データと実際に治験に協力した病院側のデータとの相違など、Muse細胞が世の中に出ることに不都合を感じている人たちがいるのではないかと勘繰ってしまいます。

 特に、理不尽とも思える審査結果と、PMDA内の利益相反を疑われる審査官の存在は、かつての丸山ワクチンの審査をめぐる利益相反疑惑を思い起こさせ、嫌な思いを感じさせます。

 亜急性期脳梗塞の治療薬は、治験でも相当いい結果が出ていたようなので、今後の腎臓病の治療薬の開発を含め、国民が一日でも早くこのような素晴らしい治療薬を使えるように、関係者の皆様の努力に期待したいと思います。

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