徳田けんいち後援会

科学・医療
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ユルゲン・トールワルド「近代外科を開拓した人びと」


 「近代外科を開拓した人びと」は、ドイツのドキュメンタリー作家、ユルゲン・トールワルド(1915年10月28日~)が1956年に出版した、近代の外科の世界の苦悩を描いたドキュメンタリー作品です。

 トールワルドは多くの資料をもとに、外科の黎明期における重要な出来事を小説のようなスタイルで再現していますが、彼の作家としての技量、表現力が大変すばらしく、あたかも読者は物語のなかの諸場面に居合せているかのような錯覚を覚えます。

 作品を貫いているテーマは、消毒法と麻酔の発見です。

 それまで長い間、消毒法が知られていなかったために、外科の臨床の現場では、多くの人たちが感染症で亡くなり、また麻酔なしで手術が行われたために、手術室はあたかも屠殺場のような状態になっていました。

 作品のなかに、フロイト、リスター、コッホなど、歴史上の人物が登場し、物語のなかの登場人物の一人として振る舞う姿が、大変興味深く感じられます。

 近代の外科の物語というと、医学を志す人たちにしか関係のない話のように聞こえるかしもしれませんが、この作品は読物としても十分おもしろいので、一般の方々にもおすすめです。

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