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日本のコロナ対策は独特だけど、僕は希望を持ちたい(パックン)

 パックンが書いたコラムがニューズウィーク日本版に掲載されていましたので、ご紹介させていただきます。
 最初、ライターによる代筆だろうなと思いながら読み始めましたが、文章のニュアンスが今年1月の東村山法人会の講演会で拝見させていただいたパックンの軽妙な口調を彷彿とさせ、ご自身でお書きになっているなと感じることができました。
 コラムの内容は日本の独特な新型コロナ対策を論じたものですが、視点を変えた日本人論になっていて、大変面白く読ませていただきました。

 以下、ニューズウィーク日本版(5/1)からの引用になります。

 日本の独特なやり方に、世界の人はびっくりする。え? 口契約だけで仕事が成り立つ!? 宗教に頼らず倫理観を国民に植え付けられる!? 魚に火を通さずに食える!? COVID-19、新型コロナウイルス感染症に対するアプローチも驚くほど独特だ。

 コロナ感染を防いだ、もしくは封じ込めた、世界の「成功例」と比べてみよう。成功モデルは主に2つ見られる。1つ目は都市全体を封鎖したり、広範囲で多少乱暴な手段を用いるスタイル。もう1つは、個人の動きを監視したり、小規模の感染予防を徹底するスタイル。ハードとソフト。荒々しいときめ細かい。「木綿」と「絹」とでも言おう。

 ハードの代表例は新型コロナの発祥地でもある中国の武漢(12月に謎の感染症が発覚したときに、ウイルスより先に「情報」を封じ込めた中国政府の過失が大きいことは言うまでもないが、取りあえず言っておこう)。武漢市は交通網の封鎖や市民の外出禁止のほか、人口約1100万人の都市全体からの出入りも禁止した。超厳格なロックダウン(都市封鎖)だ。でも、2カ月弱で武漢は「新規感染者ゼロ」を発表し、今は封鎖を解除し、経済活動も徐々に再開している。失敗からの成功だ。

 ソフトの例としては台湾が模範となる。早い段階で中国全土からの入国を禁止し、マスクの製造や配給を始めた。さらに入国管理と国民健康保険のデータベースを統合し、国民一人一人の外国渡航歴と健康状態を照らし合わせてリスクの高い人を見いだした。また、携帯アプリで自宅待機中の人を監視するシステムを導入した。こういった対策で経済活動をほとんど止めなかった台湾はいまだに感染者数を500人弱に抑えている。失敗なしの成功例だ!

 ほかにもきめ細かい対策例を見てみよう。韓国では1日に10万個以上の検査キットを製造し、「ドライブスルー検査」を実施した。中国・南京では地下鉄の改札やデパートの入り口などで道行く人の体温を測る検温ステーションを設置した。シンガポールでは市民の携帯の位置情報を集め、感染者との接触を追跡して、個人にアラートを出すアプリを開発した。ちなみに、おそらくシンガポールではパソコンを使えない大臣をサイバーセキュリティ担当にしたりしないはず。いい考えかも!

 程度や形式はさまざまだが、武漢のモデルをまねした都市が多く、世界で3人に1人がロックダウン中という試算もある。例えば、イギリスでは罰金付きの厳しい外出制限を警察が強要する。国民は買い物や通院、そして1日に1回、1種類だけの屋外での運動が許される。はい、「1種類だけ」。トライアスロンの練習だと3日ないとできないってこと。

 荒くてハード。打撃が大きいけど、ロックダウンは有効的。イギリスの例に戻ると、最初はウイルスの脅威を軽視していたが、やはり感染は止められなかった。経済活動を止め、コロナとの闘いに専念したら回復路線を歩み始めた。これ、ボリス・ジョンソン首相個人の話だが、国自体も同じ流れを見せている。

 徹頭徹尾「自粛の要請」だけ

 さて、世界の成功例と比較して日本は? 大量検査はしない。街で検温しない。アプリを作らない。アラートを送らない。かといってロックダウンもしない。日本のアプローチは、ハードでもソフトでもない。木綿でも絹でもない。「高野」かな?

 無理やり豆腐に例える必要はないけど、日本は独自のやり方をここでも見せている。水際対策が失敗した後、まず執ったのはクラスター(患者集団)対策。密閉・密集・密接という「3つの密」の環境を避けるよう国民に呼び掛け、2月末にイベントの自粛、3月上旬に休校が始まった。お笑いライブも一気に自粛対象となり、友達の芸人は「闇営業もない!」と嘆いていた。「食べることを自粛するしかない」と話す仲間も。

 4月に入ると、自粛の網をどんどん広げ遊興施設の営業休止を求めた。ボウリング場、ライブハウス、バー、ナイトクラブ、キャバレー、性風俗、射的場などなど(初めて気付いたけど、この並びだと「射的場」も微妙にいやらしそう)。このウイルスは人の喜びを栄養源にするのかと思うぐらい、娯楽が生活から消された。

 政府によると目標は「80%の接触削減」。しかし、最初は出勤を控えることは強く求めていなかった。どうも計算が合わない。例えば職場で30人と触れ合う人が夜遊びをやめただけで5分の1に接触を減らせるというなら、普段は毎晩120人と飲んでいたことになる。「サラリーマンみのもんた」という設定かな。

 政府もさすがにこの矛盾に気付き、出勤率を下げるよう企業へ呼び掛けた。しかし、これは徹頭徹尾、「自粛の要請」にすぎないもの。強制するつもりは一切ない。それを証明するためにか、安倍晋三首相が自粛要請を発表したその日に、首相補佐官が体を張って数百人の立食政治資金パーティーを開いた。

 権力なのか、指導力なのか

 これが最も日本独特な点。他国の外出制限・禁止と違って、外出自粛要請。つまり「お願い」だ。ロックダウンは通常罰則が付く。逮捕や拘留のほか、玄関のドアを溶接して家に閉じ込める(中国)、スクワットさせる(インド)、雀卓を壊す(また中国)、催涙ガスを使う(ケニア)、棒でたたく(またインド)などの手段で警官が街中をパトロールし強要する。日本ではDJポリスでさえ街に現れないし、たたかれているのは首相のみ。「うちで踊ろう」を家で聴いて踊らなかっただけで。

 全国に緊急事態を宣言しても態度がご丁寧。他国の首脳は「出るな!撃つぞ!」(フィリピン)と言っているところ、日本は「ご不便をおかけしますが……何とぞご協力をよろしくお願いします」。国民の命を守るための、エレベーター点検の張り紙のような文言。いい国だね!

 でも、協力に頼った曖昧な制度だと、自己判断でミスをする人は必ず出てくる。繁華街に行く若者。商店街に行くお年寄り。潮干狩りに行くアサリ好き。大分県での集団参拝や花見的な会食に行く〇〇夫人。まあ、「桜を見る会ロス」の気持ちは分かるけどね。

 医療関係者や公職者たちの判断が甘い時もある。会食やカラオケを楽しんだ慶応病院の研修医や、居酒屋で歓迎会に参加した警察署長が実際に感染している。性風俗店に行った野党議員もいた。まあ、個人的な緊急事態の気持ちは分かるけどね。

 硬くもきめ細かくもない日本の制度は、小さな穴だらけだ。まさに高野豆腐のように(あ、豆腐の例えが成立した!)。結局、穴から漏れるものも多く、感染を封じ込めることはできていない。

 では、なぜ強制的に穴を閉じないのか? 権力の問題?

 コロナ危機を利用して権力集中に走る外国政府が目立っている。イスラエルでは携帯のデータで国民を監視し、首相の汚職裁判を延期。チリでは、ロックダウンに動員された警察が反政府デモを制圧。ボリビアは予定していた大統領選挙を延期。極め付きはハンガリー。超法規的な権限をオルバン・ビクトル首相が無期限で握った。独裁者ならではの「ハンガリー精神」だね。

 しかし、日本では一切そんな動きが見えない。むしろ、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正しても、その後に緊急事態を宣言しても、国民の私権は制限しない! 強制力がない! と政府が自ら権力の限界を繰り返し主張する。

 なぜなら、いい国だから!

 でも考えてみれば、健康増進法改正によって、4月から屋内での原則禁煙があっさり命じられた。コロナ対策も健康を増進するためだが、強制力を持つ法案は出てこない。裏ですったもんだしているかもしれないが、罰金制度などを提案する政治家は表に出ない。なのに、お店で喫煙する人に30万円以下の過料が簡単に科されるのだ。まあ、しょうがない。吸ったもんだから。

 いい国でも、必要なときに国民の行動を制限する対策は取れる。では、リーダーシップの問題なのか?

 安倍さんの指導力をどう評価するかは比較対象次第だ。ドナルド・トランプ米大統領と比べてみよう。

 安倍さんはコロナの脅威を最初から軽視していない。トランプと違って、「アンダーコントロール」とは言わない(五輪招致のときにフクシマに言及した以外では)。

 無根拠な誤報発信もしない。トランプは検査、ウェブサイト、入国制限、物流、ワクチン、薬、人工呼吸器などなどに関して事実と異なる主張を繰り返している。過去の嘘についても嘘をついている。例えば、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンがコロナ治療に効くとトランプは主張した。嘘だが、その後その成分が入っている洗剤を飲んだ人もいた。しかも2人! 今は1人しかいないけど……。

 パイオニアだから迷って当然

 一方、安倍さんは、話の内容と矛盾する「3密」の記者会見を開いても、あおらず、隠さず、正しい情報をきちんと活舌悪く伝えている。

 安倍さんはコロナ対策を私物化しない。トランプは国民への給付金の小切手に自分のサインを入れることにした。日本国民に給付する「アベノマスク」に安倍さんの名前が入っているが、あれは付けたくて付いたものではない。

 安倍さんはWHO(世界保健機関)への資金拠出を止めていない。ロックダウン中の自治体での反政府デモをあおっていない。「大統領の机に似合わない」という理由でマスク着用を拒否していない!

 小錦さんの隣にいれば痩せて見えるのと同じで、トランプと並べると、安倍さんはかなりよく映る。しかし、日本政府のコロナ対策の問題点も認めざるを得ない。休校が早かったのに、その後の対応が遅かった。検査が足りないし、その説明に一貫性がない。休業補償や給付金の方針が二転三転し救済が遅延している。全体的な行き当たりばったり感がある。仕方ないかもしれない。日本はマイウェイを切り開いているから。パイオニアは迷って当然だろう。

 個人的な意見だが、僕はWHOの推奨に従い、検査の数を増やして海外の成功モデルを取り入れたほうが確実だと思う。また、経済再稼働のために今は多少の私権は犠牲にし、予防策や国民の救済を急ぐために多少の民主的議論を省いてもいいと感じる。でも僕は例外かも。こう見えても、日本人じゃないから。

 日本には日本のやり方がいいかもしれないし、成功するかもしれない。今のところは感染者数も死亡者数も大国の中では最低レベルだ。もしかしたら、普段から自転車にロックをかけないこの国なら、ロックダウンしなくても安全かも。

 考えてみたら、俗に言う「放送禁止用語」も本当はテレビの出演者が空気を読んでオンエアで言わないようにしている「自粛用語」にすぎない(CMの間のスタジオはうんこちんちんの話ばかりだけど)。コロナ対策も自粛で成り立つかもしれない。そして、検査も監視もあまりせずとも、感染予防はできるかもしれない。そのメカニズムは想像できないが、可能性は否定できない。

 希望を持とう。ひょっとするとどこのまねもしないで医療も経済も崩壊させずに危機を乗り越える「日本モデル」が確立するかもしれない!

 ただ、成功しても、どこの国にもまねできないだろうね。

 あと、失敗すると爆発的感染、医療崩壊、第2波、第3波の襲来、長期的な経済危機などが考えられる。大きな賭けだ。

 まあ、ウイルスも自粛してくれればいいけど。

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