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思考が浅く行動が遅いのんきな日本人、グーグルで感じた日本企業の課題

 官僚化した日本企業の経営者と進取の精神に富むグーグルの経営者、従業員との比較ですが、グーグルのような秀才集団になれるかどうかは別として、少なくてもその姿勢だけは学びたいと思います。
 東芝の経営が傾き、シャープが外国企業に買収されてしまうのも、無理はないと思います。シャープが買収後、短期間で業績を回復したのを見ると、いかに経営者の資質が問われているかがわかります。
 辻野氏は別の紙面で創業時のソニーとグーグルの共通点を指摘していますが、同感です。ソニーには、創業時のような進取の精神を持ち続け、日本の強みや役割をしっかりと意識しながら、常に新しい試みに挑戦し続けていただきたいと思います。 

 以下、2019/6/10のビジネス+ITからの引用になります。

 元グーグル日本法人代表 辻野晃一郎氏へのインタビュー。前回・前々回では未来学者ジョージ・ギルダー氏が著した『グーグルが消える日 Life after Google』を基に、グーグルが世界を席巻した理由やグーグルよりさらに先の時代の見通しを聞いた。では、これからテクノロジーが紡ぎ出す時代において、日本企業はどう戦っていけばよいのか。22年間在籍したソニーとグーグルとの比較も交えながら語ってくれた。

●日本企業の社長は「サラリーマン」

―― 企業の歴史を見ていると、イノベーションのジレンマに陥ることが多いと感じます。育ちすぎた既存のビジネスを聖域としてなかなか手を付けられない。

 辻野氏:グーグルはまだ創業者が2人とも若いので、彼らが元気な限りはそう簡単におかしくなることはないと思います。アマゾンもそうでしょう。一方でアップルは今後予断を許さないのではないでしょうか。スティーブ・ジョブズ亡き後、ティム・クックは秀逸な経営者として頑張っていますが、彼がどんなにビジネスマンとして優秀でも創業者のジョブズとは違います。

 いくつかの日本企業にも投資している米国のあるアクティビストと話したときに、「ファミリー企業にしか投資しない」と言っていました。その理由を尋ねると、「多くの日本企業、特に大企業の社長は、経営のプロでもビジネスのプロでもなく、単に社内政治を勝ち上がってトップになっただけの人が多く、ゾンビ企業ばかりだから」とのことでした。

 実際、多くの日本企業のトップには事なかれ主義のサラリーマン経営者が増え、自分なりのビッグピクチャーを描き、大胆な投資や企業変革を断行している人は少ないように感じます。仮にサラリーマン社長であっても、前回話したような「時間・空間的に大きなスケール感」でユニークなビジョンを描き、さまざまな社内のしがらみを言い訳無しに断ち切って、フットワークよく大胆なチャレンジを打ち出していくような未来志向の経営者がもっと必要です。

 新興企業では、たとえばメルカリ創業者の山田進太郎氏のようなユニークな起業家も出てきました。メルカリは米国市場の立ち上げなど、海外では苦戦していますが、最初からグローバル指向です。このように、「最初は日本市場から」ではなくて、「最初からグローバル市場へ」という視点で起業する人たちがこれから増えていくことが重要です。

●のんきで思考が浅く行動が遅い日本人

―― その世界観の中で、今を生きる人に求められることは何ですか。

 辻野氏:「あなたは何のために生まれてきましたか?」とか、「あなたが生まれてきた使命は何ですか?」という根源的な問いに確信を持って答えられる人はほぼいないでしょう。よほどの天分に恵まれた人以外は、あるいはそういう人でも、自分がなぜこの世に生まれて来たのか、本当のところは誰もわかりません。人生とは、もだえ苦しみながらその答えを探し続ける旅なのかもしれません。

 しかし、今はこれまで以上にそういうことを真剣に追及する生き方が問われているように思います。上司や組織に命令されるがまま、思考停止したその日暮らしの生き方をしているとすぐに人工知能に取って変わられてしまうでしょう。資本主義や自由主義の下、経済や金融の世界は飛躍的に発展しましたが、物欲や金銭欲などがすべてに優先されるような世の中になって格差も拡大し分断も進んでいます。我々にとって真の幸福とは何なのでしょう。

 人工知能の急速な発達や、ゲノム編集などの医療技術の革新によって、人類はついに神の領域に踏み込み始めたと言ます。GAFAの今後や日本の行く末を考えるときに、テクノロジーの急激な進歩が人類にもたらすものについて、生命や宇宙の起源とか、人口爆発や環境破壊など地球が抱える諸問題などと関連付けた大きなスケールで深く洞察する力が求められています。実学だけが暴走するのを防ぐためは宗教や哲学などの役割も見直されねばなりません。

 私は宗教の専門家ではありませんが、我々日本人の宗教観を考えるに、歴史的にはキリシタン迫害や廃仏毀釈(きしゃく)などの過去はあるものの、八百万(やおよろず)の神という表現に象徴されるように多様性への寛容度が高いと感じます。クリスマスを祝ったと思ったら寺に行って除夜の鐘を聞き、年が明けると神社に参拝するなどの行動パターンは、日本人の受容性や順応性の高さを表していると思います。しかし裏を返せば、節操のなさや思考が浅いという見方もできるかもしれません。「平和ボケ」という言葉もよく使われます。

 ハーバード大学の国際政治学者サミュエル・ハンティントンは、1996年にベストセラーとなった著書『文明の衝突』の中で世界の文明を7つに分けました。その中で、他に帰属しない独特の文明を持つ国として日本を位置付けています。

 日本や日本人だけを特別視しすぎることには問題がありますが、他国にはできない日本や日本人ならではの世界への役割は何か、ということを意識することは決して悪いことではありません。それはまさに我々の使命を見つけ出し自信や誇りと共にそれを遂行しようというエネルギーにつながります。単に欧米型をまねたりシリコンバレー流をコピーしたりすることが我々のやることではありません。

 グーグルは米国発の多国籍企業として、世界をつくり変える、未来をつくるということをスピーディーにやり続けている企業です。一方、日本に生まれ育った私たちが、日本の強みや役割をしっかりと意識しながら、グーグルや欧米とはまた別のやり方で世界に貢献する意欲を持ち、その意欲を具体的な行動と結果につなげていくことを世界は歓迎するでしょう。

●クラウド時代、圧倒的なスピード差が生まれる

―― 『グーグルが消える日』では「スピードの重要性」も説かれています。特に「時間は、費用の最終的指標である」として重視しています。

 辻野氏:「時は金なり、time is money」と言いますが、お金は失っても取り戻すことができる資源である一方、時間は誰にとっても有限で失った時間を取り戻すことはできません。いかに時間をムダにしないかは生きていく上で極めて重要なことです。

 日本では4月から「働き方改革関連法」の施行が始まりましたが、日本の働き方は平成元年から変わっていません。 ITの活用含めて非常に遅れているのが実情です。

 グーグルでは、業務遂行においてクラウドの環境を使いこなしていてアイドリングタイムがなく、世界中のオフィスがタイムゾーンを生かしてつながりながら24時間365日休まず高速回転していました。割り込み処理に柔軟な人たちが多く、メインの仕事をしていても割り込みが入ると誰もが柔軟かつ迅速に対応してくれるので、割り込みを入れた側も待たされることなくスピーディーに仕事を進めることができました。 「今手が離せないから明日まで待って」というような反応がないのです。

 また何をするでも、ぎりぎり最後の1分までムダにしないでその1分ぶんだけ仕事の完成度を上げるために全力を尽くしていた、という印象があります。

 会議では、最後に「アクション・アイテム」「それらの責任者」「締め切り」が議事録のサマリーにリストアップされ、会議室を出ればすぐにアクションに移るのが当たり前でした。現場の担当者に権限が委譲されているので、稟議(りんぎ)を回す必要もなく、その場で決めればすぐにアクション可能であり、会議をやったら必ずアクションにつなげるというスタイルです。アクションにつながらない会議は嫌われ、そういう会議を主催する人の会議には誰も来なくなります。

 日本ではクラウドと言うとインフラの議論になりがちですが、本質はそうではありません。先ほどの会議の議事録一つとっても、社内に公開しておけば会議に出ていない人でもリアルタイムで内容を共有できます。

 すなわちクラウドとは、情報の共有化を促進し、結果的に即断即決即実行のリアルタイム経営を実現する有効な手段であるということが本質です。ですから、クラウドの導入によって経営改革を志向するのであれば、CIOに任せておけば済む話ではなくて、CEOが自身の専管事項として、組織のフラット化や現場への権限移譲などとともに断行しなければ意味はありません。クラウドに移行したところで、組織の多重階層や縦割りをそのままにしていては経営の高速化は実現できません。

●日本が強かったのは過去の話

―― 日本企業とグーグル、その成長スピードは著しく違うように思われます。

 グーグルに入社した直後は、直前まで働いていたソニーとどうしても比較してしまいました。当時のソニーは巨額の損失を計上して経営危機に陥っていましたが、外から見ている限りはどこかのんびりしているようで死に物狂いという印象は受けませんでした。

 一方、グーグルは順調に右肩上がりで急成長し続けているにもかかわらず、常にありとあらゆる打つべき手を考え続けて矢継ぎ早にそれらの手を打ち続けている印象でした。ちょうどユーチューブを買収したり、モバイルファーストの時代に備えてAndroidの開発に注力したり、Chromeブラウザーの開発やストリートビューの実現など、まさに全力で高速回転していました。

 好調な成長に一切甘んじることのない姿からは、日本的な表現になりますが、「常に刀を枕元に置いて寝る」というような緊張感を感じました。CEOだったエリック・シュミットも「ウェブの世界はクリック一つでユーザーが瞬時に離れる」というようなことをよく言っていました。

 今、世界トップの座を巡って米中の覇権争いが始まっていますが、そのはざまにいる日本には存在感がありません。かつて「電子立国日本」と呼ばれて半導体や家電産業が世界を席巻したのははるか昔の話になってしまいました。

 いまや半導体専業メーカーとして最後のとりでとなったルネサスや、同じく液晶のジャパンディスプレイなども苦しい状況です。日本はもともとモノ作りやデバイスに強い国だから、IoTやデータ民主化の時代になれば、もう一度チャンスがあるだろうという人もいますが、それほど単純な話ではありません。とはいえ、もちろんチャンスがないわけではないでしょう。

―― そのチャンスを捕まえるために、今、何をすべきでしょうか。

 先ほども述べたように、日本の強みや役割をしっかりと棚卸しして、我々なりのやり方で世界に貢献する意欲を持たねばなりません。

 そして、GAFA以上の知性と使命感、スケールとスピードで動くことが必要条件です。その迫力が今の日本のどこに残っているのか、私にはわかりませんが、グーグルの貪欲さやスピードに比べると全体的にはずいぶんおとなしい印象です。もちろん、ひところに比べると若くて元気な人たちが世界を視野にどんどん起業するようにもなってきていますから、そういう流れを大切にしなければなりません。

 『グーグルが消える日』には“知の巨人”たちの名前がたくさん登場し、著者もそれらの多くと実際に会って対話しているようでした。IQの高い人たちがいつもさまざまなテーマについて話しながら、互いに刺激し合って思考を深め行動を加速して世界は進化ししていくのだということを感じました。グーグルも、世界中から集まった人たちによる活発な異業種交流会が日常化しているような環境でした。

 日本は同質性の世界で「あうんの呼吸」とか「以心伝心」とか、最近では「忖度(そんたく)」などという言葉も使われます。日本人には居心地がいいのかもしれませんが、このような殻を破って異質な人たちともっと積極的に交流することも大切なことだと思います。

―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。

聞き手:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、渡邉聡一郎 執筆:翁長潤

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