現在のイギリスの首相はリシ・スナク(Rishi Sunak)で、インドからの移民の家族のなかで生まれました。
2024年のロンドン市長選挙で歴史的な3期目の勝利を収めたサディク・カーンはパキスタンからの移民の子供です。
イギリスの首相と、イギリスの首都であるロンドンの市長が、ともにアジアからの移民の家系から生まれたということは、イギリスの未来を占う上できわめて暗示的です。
イギリスの人口は現在約6700万人です。移民は過去20年間にわたって人口増加の主要な要因となっています。
2004年から2022年にかけて、人口増加の60%は純移動(移入者数から移出者数を引いたもの)によるものでした。2023年の統計によると、約120万人がイギリスに移住し、53万2000人が国外に移住したため、純移動数は約68万5000人でした。
これは1990年代後半から続く高い移民流入の傾向を反映しています。特に、EUからの移民が多く、EU離脱前は約340万人のEU国民がイギリスに居住していました 。
移民の構成比について見ると、2011年の国勢調査によると、イギリスの人口の81.88%が「ホワイト・ブリティッシュ」として識別されています。他の主要な人種グループとしては、黒人イギリス人が8%、アジア系イギリス人が2%を占めています。
移民の増加は特に都市部で顕著であり、ロンドンなどの主要都市では多様な民族が共存しています。また、2022年には、イングランドとウェールズでの出生の30.3%が非イギリス生まれの母親からでした 。
将来的には、純移動が継続することを前提に、イギリスの人口は2046年までに約7660万人に達すると予測されています。もし純移動がゼロであれば、2027年以降は自然増減が負になるため、人口は減少すると予測されています 。
ロンドンの市長選挙などで、移民やその子孫が有力な候補として登場しやすい背景には、ロンドンの多様な人口構成が影響しています。ロンドンは非常に多文化な都市であり、その人口の大部分が移民やその子孫から構成されています。
ロンドンの人口は約900万人で、そのうち約40%が外国生まれの住民です。また、少数民族や移民の第二世代を含めると、全人口の過半数が移民背景を持つと推定されています。この多様な人口構成は、選挙でも大きな影響を及ぼしています。
サディク・カーン市長のように、移民の背景を持つ候補者が成功する理由の一つは、彼らがロンドンの多様なコミュニティに対して共感を持ち、その利益を代表する政策を掲げていることです。カーン市長は、移民コミュニティに対する包括的な政策や差別に対する断固とした姿勢で広く支持されています。これにより、移民や少数民族からの支持を得やすくなっています 。
近年のロンドンの市長選挙では、多文化主義を強調する候補者が有利となる傾向があります。多様性を尊重し、移民の権利を守る姿勢を示すことが、広範な支持を集める鍵となっています。これは、ロンドンの人口構成が多文化的であることから、移民やその子孫が選挙結果に大きな影響を与えるためです。
したがって、ロンドン市長選挙では、移民背景を持つ候補者が成功しやすくなっているといえます。これは、ロンドンが多様性を重視し、包括的な政策を支持する都市であることを反映しています。
またそれは、「ホワイト・ブリティッシュ」がロンドン市長になることが、もはや考えられないほど難しくなっているということを意味します。