丸山ワクチンががんの治療に使われるようになるまでの経緯はいささか複雑です。しかし丸山ワクチンの歴史的な立ち位置、正当な評価を知るためにも、ここでは丸山ワクチンの来歴にかかわる詳細な説明が必要であるように思われます。
丸山千里先生 / 皮膚結核の治療法の研究
丸山千里先生はもともと皮膚科の医師で、臨床医としての業務のかたわら、皮膚結核の治療法の研究に携わっていました。
結核は日本において、長いあいだ死亡率第一位の座を占めており、戦前から戦後しばらくのあいだにかけて、結核患者をいかにして死から救うかということが、医学界の最大の課題になっていました。
ロベルト・コッホ / ツベルクリン
丸山先生は1944年(昭和19年)秋から結核ワクチンの研究に取り組むようになりましたが、丸山先生が結核ワクチンの研究をはじめる前から、結核のワクチンはありました。
結核菌の発見者、ロベルト・コッホが作ったツベルクリンです。
ツベルクリンは1890年ベルリン大学ではじめて用いられ、世界中にセンセーションをまき起こしましたが、発熱や喀血などの副作用が強く、治療には不適当であるという烙印を押されることになりました。
やがて何年か経つうちに、治療には使えないが診断には使えるということになり、ツベルクリン反応として生き残ることになりました。
パスツール研究所 / BCG
ツベルクリンは人間の結核菌の死菌を用いていましたが、その後、牛の結核菌を用いたBCGがフランスのパスツール研究所で開発されました。
しかし、あくまでも予防としての効果しかなく、結核を治療するまでにはいたりませんでした。
丸山先生 / ツベルクリン
丸山先生はツベルクリン療法について、以前から強い関心を抱いていました。
理論的にはどこにも非の打ちどころがないもののように思われ、結果がよくなかったのは、どこかに問題があったからで、その問題が解決すれば、結核治療に用いることができるのではないか、問題はツベルクリンの液中に有害な成分が含まれているということで、その成分が発熱や喀血をひき起こすことになり、有害な成分を取り除けば、あとに有効な成分が残されるはずだと考えました。
試行錯誤
それからツベルクリンのなかの有害成分を探す試行錯誤がはじまりました。
やがて実験をすすめていくうちに、ツベルクリン反応としてあらわれる発赤の因子である蛋白質やペプチドが有害であるらしいことがわかってきました。
動物実験のあと、有害成分を取り除いたワクチンを皮膚結核患者に使ってみると、驚くほどの効果があることがわかりました。
その結果、有機成分を除去した残りの成分中に存在する多糖体が、結核感染動物の抗体を作るのに役立つことが判明しました。
丸山ワクチンの完成
こうして丸山先生は、多糖体+核酸を成分とするワクチン、S・S・M(丸山特異物質)を作り出すことができました。
化学療法剤の出現
丸山ワクチンは、皮膚結核の治療に抜群の効果を示すようになりました。
しかし、スプレプトマイシンなどの化学療法剤が出現するようになると、結核の治療法に大きな転機が訪れるようになり、丸山ワクチン研究は影が薄くなっていきました。
丸山ワクチンの改良 / 肺結核治療の効果
丸山先生はワクチンの改良に努め、丸山ワクチンはその後、空洞の縮小、消失など、肺結核にも際立った威力を発揮するようになってきました。
また、化学療法の効き目がなくなった耐性の菌を持った結核患者にも、著しい効果をあげるようになりました。
ハンセン氏病 / 化学療法の限界 / 丸山ワクチンの可能性
ハンセン氏病の治療には、化学療法剤が患者の斑紋、結節、潰瘍に卓効を示しましたが、それでも知覚マヒ、運動マヒ、発汗障害、脱毛など、あまり効果がないものもありました。
ちょうど丸山ワクチンが結核の治療に徐々に効果を発揮しはじめるようになった頃で、丸山先生はライ菌と結核菌が微生物学上おなじ抗酸性の桿菌で同族であることから、丸山ワクチンでハンセン氏病も治せるのではないかと考えるようになりました。
ハンセン氏病 / 丸山ワクチンの効果
丸山先生はハンセン氏病の治療のため、1974年の秋から、東村山のハンセン氏病療養所、国立多摩全生園に通うようになりました。
丸山ワクチンは、ハンセン氏病患者に対しても著しい効果を示しました。
ハンセン氏病 / 奇妙な疑問
丸山先生は全生園にその後二十年間通い続けることになりましたが、あるとき西武線の秋津駅で帰りの電車を待つあいだ、全生園にすでに十年以上も通い続け、施設には1300人ものハンセン氏病患者がいるのに、まだ一度もがんの病理解剖の話を聞いたことがないことを奇妙に思いました。
丸山先生はこのとき、ハンセン氏病患者は、殆どがんに罹っていないのではないかと疑いました。
丸山先生は秋津から池袋行の電車に乗り、次の清瀬で下りると、結核の国立東京療養所を訪ねました。
ライ菌と結核菌は同族です。
思ったとおりで、やはりここにもがん患者がいないことがわかりました。
閃き / 独創的な着眼点
結核患者やハンセン氏病患者のなかにがん患者がいないという事実は、体のなかに結核菌なりライ菌なりが存在すれば、がんは発生しないということになります。
結核にかかると、体内に結核菌が多くなるから、それに対抗するための抗体ができます。
ハンセン氏病も同様です。
結核菌やライ菌の抗体を多く持つ患者にはがんが取り付かないとすれば、結核菌、ライ菌の抗体ががんをも追放する力を持つということになります。
がんの抗体と、結核、ライ菌の抗体は、相当近い間柄にあると考えられます。
ライ菌を培養する方法はいまだに発見されていませんが、結核菌ならいくらでも培養できます。
結核菌を殺して人体に注射するというのがツベルクリンで、ツベルクリンから有害な成分を取り除き、副作用をなくしたのが丸山ワクチンという位置づけになります。
がんの治療薬としての丸山ワクチンの完成
こうして丸山先生は、丸山ワクチンをがんの治療にも使えるかもしれないと、はじめて考えるようになりました。
これが結核の治療薬からがんの治療薬に変化する、丸山ワクチンの歴史における重要な転向点になります。
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「がんを追いつめる 丸山ワクチン」には、丸山ワクチンをがんの治療に使えるようになるまでの経緯と、実際に丸山ワクチンで治癒した多くのがん患者の体験談が載っています。胃がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、脳腫瘍、骨肉腫など、手術、抗がん剤、放射線治療などの標準治療で対応できなくなった様々な末期がんが、丸山ワクチンの投与で治癒していることがわかります。
当時から、丸山ワクチンを「あれは水みたいなものだ」と揶揄する先生も少なからずいらっしゃったということですが、これらの治癒例を見るかぎり、かならずしも正当な評価とは言えないように思われます。
制がん作用の機序にしても、現在では、丸山ワクチンが皮膚表面に近い樹状細胞に寄生することで、おもに自然免疫の機能を活性化していることがわかっています。丸山ワクチンは、言わば免疫療法の魁ともいうべき薬剤で、現在でも最も有力な免疫療法の一つであるように思われます。
丸山ワクチンは、2023年現在、すでに累計で410,000人の方々が利用しています。このように、理論的な裏付けも実績もあるがん治療を、隔日注射により40日分の薬剤費9,000円+消費税、このほかにワクチンの注射をしていただく診療施設において注射料(技術料)、文書料(経過書作成)等が必要になりますが、注射料を規程の技術料300円で実施していただける病院、クリニックもあるようなので、1か月15,000円前後の費用で受けることも可能になります。
総合病院など大きな病院では、主治医の先生が標準治療以外の治療を拒絶する場合もあるかもしれませんが、自分の大切な命がかかっていることなので、手術などの標準治療を受けるあいだ、また、その後の経過観察のあいだ、丸山ワクチンを併用できるようにしていただくと、がんからの生還率がより高まるように思われます。
丸山ワクチン オフィシャルサイト
https://www.nms.ac.jp/sh/vaccine/
治療を受けるには
https://www.nms.ac.jp/sh/vaccine/treatment/index.html
なお、丸山先生は食事や栄養のことには一切言及していませんが、食事や栄養の部分にゲルソン療法の考えを取り入れると、ワクチンの効果がさらに高まるように思われます。
ゲルソン療法関係書籍の翻訳で実績のあった今村光一氏も、生前、おなじようなことをおっしゃっていました。
ちなみに「がんを追いつめる 丸山ワクチン」は、当然のことながらすでに絶版になっていますが、アマゾンなどで検索しますと、中古品は今でも何冊かヒットします。
「がんを追いつめる 丸山ワクチン」は、丸山先生が執筆した、おそらくは唯一の書籍になると思います。
先生の生前の、書籍から伝わって来る肉声をお聞きになりたい方々には、中古品の在庫があるうちに、ぜひお買い求めになることをおすすめしたいと思います。